木村理からのメッセージ
東都春日部病院 病院長・木村理(きむらわたる)
医療法人社団全仁会 東都春日部病院 病院長
日本消化器外科学会名誉会長
山形大学名誉教授
東都大学臨床教授
驚異のコロナ治療薬
ロナプリーブ(中和抗体カクテル)
効果のほどは温度版を見ると明らかである。
投与直前まで熱発が続いていた状態が、投与後5時間で上昇するが、翌日から微熱・平熱になってくる。(図1~3)
コロナの中和抗体カクテル、ロナプリーブは、発症から7日以内の患者さんに有効で、重症化を防ぐ。
死亡率を減少させる。
われわれは積極的に酸素投与をしていない患者さんに投与している。
すなわち、ロナプリーブはCOVID-19 重症化リスク因子を持つ患者さんの重症化抑制、死亡リスク低下、症状消失までの期間短縮が臨床試験で示されており、これまでの8例の経験では、25分の点滴の後、約5時間して約39度の熱が出る、というのが平均的副作用と考えている。
翌日には微熱か平熱になり、次第に正常化する。
日帰りで点滴投与するのはやや難しいかと思う。
デルタ株をはじめとする複数の変異株に効果がある。
(院長百戦9月1日~9月6日を改変・再掲)
図1
図2
図3
木村理の「はとバス理論」
「はとバス HATO BUS」は現在観光のために使われているのではなく、コロナ患者の輸送に使われている。東京駅丸の内南口から大手町気象庁前のコロナワクチン集団接種会場前までを何台ものバスでバス内座席をソーシャルディスタンスにしながら行き帰りの面倒を見ている(図1~3)。
病院もこの大災害時に、ベッドをコロナ患者さんのために使おう、医師もコロナ患者さんのために尽力しよう、というのが木村理の「はとバス理論」である。
すなわち、道具は使われなくては価値がない。使われて初めて意味のあるものになるということである。ワクチンの集団接種が開始される数ヶ月以上前までは、はとバスは駐車場にたまり、観光に使われることもなく、はとバスの運転手が「観光が冷え込んじゃってこの有様です」というニュースが流れていたことを記憶している人は少なくないと思う。
それが今やコロナで大活躍である。
病院のベッドも使われなくては意味がない。医師も看護師もできる力を総動員してこのコロナの大災害に手を貸すべきである。
内容的にできないことをやりましょうと言っているのではない。患者さんは病院に入院して朝昼晩食事が出、血圧を測り、体温を測り、熱が出ていれば「大丈夫ですか」と声をかけてもらうだけでどれだけ安心するかわからないのである。実際、熱発時のカロナールの飲み方や、ジクロフェナク座薬の使い方などは普通の医療の知識である。
吐き気のある時のプリンペラン点滴やナウゼリン座薬の投与、疼痛時のアセリオ点滴やジクロフェナク座薬の使用も、室内歩行可、シャワー可、も通常の入院時の基本指示とほぼ同様に対応すれば良い。もちろん患者さんの状況に応じて変えるのは当然であるが。
保健所に提出する発生届も特段難しいことを書くのではなく、多くは事務、看護サイドで判断・記入できることである。
病院一丸となってやる気があれば、このコロナ大災害に貢献できるのである。一隅を照らすことができる。
図1
図2
図3
図の説明
図1:はとバスを降りて大手町のワクチン集団接種会場に向かう人々
図2:東京駅丸の内南口と大手町合同庁舎前(大規模接種センター)を巡回する「はとバス」
図3:はとバスとワクチン接種に携わる方たち
全国の自宅療養者に告ぐ!!
「コロナと栄養」
~自宅療養者が命を落とさないために~
ぜひみなさん栄養を十分に取ることを考えてください。肝に銘じてください。
発熱し、体力が落ちていたら、栄養を取らなくては十分な抵抗力がつきません。
ピザも食べ、スパゲティも食べ、ステーキを食べ、カロリーの高いものを十分にとって体力を回復してください。これがコロナと闘う基本的かつ最も重要なことになります。
もちろん味覚障害のある人は、ものを食べにくくなるのはわかります。胃や十二指腸に浮腫があって、なかなか食べにくい方もいらっしゃるのはわかります。しかし、それでもゼリーを冷やして食べる、栄養補助食品を摂取する、などカロリーをとにかく摂取することが重要です。しっかりした栄養摂取がなくてはコロナと闘う抵抗力も出ないのです。
電解質・ミネラル入りの飲料水(ポカリスエットやアクエリアスなど)を飲むことも重要です。水分摂取は十分に行ってください。
病院にかかれば、点滴でカロリーを補給し、栄養補助食品や食事の調節で治る方もいます。その機会が得られない方は是非自分の力で治すことを、自分の力でコロナを乗り切ることを考えてください。とにかく栄養・カロリーをしっかり取ることをお願いいたします。
当院では中和抗体カクテルを軽症の方に積極的に投与しております。
是非ご活用をお願いします。
コロナ真っただ中、歴史的時間を生き抜く!!
COVID-19の感染が7月31日に東京都で4,000人を超え、緊急事態宣言が6都道府県に8月2日から31日まで出されることになった。埼玉県も連日800人を超える日々が続いている。この第5波は鮮明になり、病床の逼迫がそこにある。
ワクチンを打っていない若者から中高年層が患者の主体となっている。以前とまったく変わっている。
コロナに罹患した若者や中高年層の症状は高熱や味覚障害、食欲不振、吐き気など様々で、その肺のCT像は、コロナ特有の間質性肺炎から、さらに進んで肺実質の肺炎を合併しているものなどさまざまである。巷ではアルコールを提供している店と、提供を自粛している店がくっきりと分かれている。酒を提供していない店舗で昼食をとる若者たちも、危機感が共有されていないような非マスク会話の嵐である。
ぜひ、若者もコロナの肺のCT像を共有し、自分の肺がそうなること、そうなりうることを強く想像して日々の行動を少しでも考えて欲しい。
2021年4月の第4週(第1回目)と5月の第3週(第2回目)で、354人分の東都春日部病院及び周辺の病院関係者のワクチンの接種が終わりました。ワクチン接種にご尽力いただいた職員・関係者各位に深く御礼申し上げます。
院内ではさまざまな職種(医師、看護師、検査技師など、清掃・食堂なども含む)を含め約290人の職員が接種を受けております。「是非当院でワクチン接種を受けたい」という非常勤の医師にも多数提供いたしました。
ワクチンのコンセプトは「より早く、より多数に」が原則です。素早く無駄にしないために、さらに院内感染クラスターを発生させない強い病院を作るために、4階及び5階の療養病棟の患者さんにも、ご家族の同意を得て先行接種いたしました。もちろん春日部市の保健所長の許可は受けております。アフタコロナの患者さんの受け入れも積極的に行なっております。
「院長百戦」では3月に「PCR陽性とは何か」について論考し発表いたしました(図1)。重要なことはPCR陽性であることにさまざまな意味・状態が含まれるということです(東都春日部病院ホームページ「院長百戦」2021年3月)。
すなわち「PCR陽性」とは
1.無症状だがこれから2~3日後に症状が出る、感染力がある状態。
2.症状が出ていて、感染力がある状態。
3.発症せず、無症状だが感染力がある状態。
4.発症から10日以上経って、感染力がない状態。
5.感染したが無症状で、感染から2~3週間以上経っていて感染力がない状態。
6.再感染した状態。
のどれかになるのです。4、5の場合はPCR陽性でも一般扱いでいい、何もしなくていいという驚愕の事実が含まれていました。
すなわち、感染力のみを問題として医療を行うとすればPCR陽性は金科玉条のものではなくなるということです。ウィルスの痕跡を見ている場合を念頭に置いた対応をしなくてはならない。ウィルスの痕跡を見ている場合には、その人を一般的な扱い(スタンダードプリコーション)としていいということです。
2020年1月以降新型コロナウイルス感染症によって、われわれの社会は大きく変化いたしました。その中で、病院では状況に対応するべく「とにかく院内感染を防ぐ」の強い意志を貫き続けており、ソーシャルディスタンスを心がけ(図2)、2020年6月からはCOVID-19対策委員会(委員長 木村理)(続いて第2派対策委員会、第3派対策委員会、現在は第4波対策委員会)を組織化し、より一層のコロナ対策に取り組んでおります。
多くの職員が集まる昼礼や会議、そして入院患者さんの面会等はすべてリモート(ZOOM)開催(図3)または併用(ハイブリッド)としております。当初はいろいろな不備もありましたが、私たちの意志の姿勢で、絶対にやると決めてやり続けているうちに、今では新しい日常(ニューノーマル)になってきております。そして、2021年2月8日にはZOOMオンラインシステムを利用した独自の院内学術集会(第1回東都春日部病院学術集会)を開催することができました。一方、診療においても、2020年3月より「テレ診察」を積極的に進め、2021年5月までで利用患者数が延べ832件となっております。
コロナとの闘いを勝ち抜くために、臍に力を入れ、日々努力を重ねております。
具体的、ここについては「院長百戦」をご参照ください。
図1
図2
図3
写真の解説
図1:PCRとはCOVID-19がその人に感染しているかどうかを見ている。感染から10日経っても概念的にはCOVID-19の感染は続いているのだ。その後ウィルス量は漸減し、感染力は次第になくなっていく。人から人への感染力がなければPCR陽性か否かは関係ない、という考え方・臨床対応である。少しでもウィルス痕跡が残っていればPCRは陽性に出るが、扱いは一般でいいということだ。
図2:2020年4月ソーシャルディスタンスをとった昼礼。それまでは大会議室に職員が集まり、昼礼が行われていたが、2020年4月からは大小会議室及び2階の外来廊下を広くぶち抜いて使い、行われるようになった(2020年4月)。
図3:われわれの昼礼(2021年1月4日:院長年頭の挨拶)は2021年の年明けからさらに進化した。大会議室が密集することなく、各部門にiPADが行き渡り、それぞれの部署でZOOMに参加できるようになった。