名前ができて存在が生じる(老子)
疾患概念と杉の花粉症・ピロリ菌(3)

御茶ノ水にある東京医科歯科大学の耳鼻科の先生が、屋上で風を捉えて研究し、その中に杉の花粉が含まれており、春になると奥多摩方面から飛来し。それが現代人の春先のアレルギーをもたらす、という発表をしたのは、1990年前後だったと思う。

これによって「杉の花粉症」という疾患概念がようやくでき、社会的にも認められ、薬の開発も始まった。一雨(ひとあめ)1億円と言われる時代もあった。雨が降ると花粉が落ちて流れてしまうので、製薬会社の売り上げが1億円下がるというのである。

時の都知事がこの病気になり、「奥多摩の杉を全部切ってやる!」と息巻いたとの噂も流れた。杉の花粉症は国民病となって認められ、世界的にも宇宙帽のような透明なガラスなどかぶって外を歩く報道も見られた。

今や、天気予報の時に必ず花粉情報が発表されるのは、隔世の感がある。